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2018年6月30日 (土)

久々にみた韓国の魂のサッカー

W杯の日本・ポーランド戦は、みていてもどかしい試合ではあった。柔道なら「指導」が連発されただろうが、これはサッカーだ。過去、点を取りに行くのか、無理をしないのか、意思統一を欠いた状態で失点していたことを考えると、方向性を徹底させたのは進歩である。

大きな大会では、結果が重要である。セネガルが同点に追いつき、決勝トーナメント進出を逃していたら、間違いなく猛烈な批判を浴びるが、決勝トーナメント進出を果たしのだから、思い切った采配として評価されるべきだろう。

一方韓国の最終戦であるドイツ戦については、前回「アジアのチームとしての存在感は示してほしい」と書いたが、それどころではなかった。久々に韓国らしい、魂のサッカーをみせてもらった気がする。

ボールキープ率は、ドイツが70%であるのに対し、韓国は30%。それでも体を張って守り、走った。伝統のカウンター、キック・アンド・ラッシュで、押されながらも、何度か得点のチャンスを作った。その粘りが、ロスタイムに入ってからの2ゴールにつながった。

サッカーに限らず韓国のスポーツは、多少武骨でも、相手が辟易するような粘りと、闘志をみせてきた。1988年のソウル五輪、92年のバルセロナ五輪で金メダル、96年のアトランタ五輪、2004年のアテネ五輪で銀メダルを獲得した女子のハンドボール、08年の北京五輪で金メダルを獲得した野球などは、その代表例だ。

しかし近年はどの競技でも、そうした闘志はあまりみられず、淡白な試合が目立つようになってきた。

ソウル五輪に向けて国全体が盛り上がっていた80年代に生まれた世代は、スポーツに対するモチベーションも高い。

けれどもその後、韓国も豊かになってきて、かつてのようなハングリー精神は通用しなくなってきた。さらに90年代頃に生まれた世代は子供の時に、会社が倒産し、失業者が続出するような深刻な金融経済危機を迎え、スポーツをするのが困難な状況にあった。

ドイツ戦で先制ゴールを決めた金英権も、父親が経営していた建設会社が倒産し、サッカーを諦めかけた。けれども高校の監督など、周囲の人の助けで、何とか続けられたという。

こうした選手には、ハングリー精神がある。男子体操の跳馬で、12年のロンドン五輪で金メダルを獲得した梁鶴善のように、個人種目では、ハングリー精神で栄光を手にした選手もいる。

ただし団体種目になると、社会の格差が広がる中、選手個々が置かれた状況も様々で、チーム全体で目指すべきものを合わせにくくなっている。

それでは、今回ドイツ戦でみせた闘志は何だったのか。最大のものは、最初の2試合を連敗したことによる、危機意識ではなかったか。

ネットを通して家族にまで及ぶバッシングや、大会を終えて帰国した選手に卵を投げつけるなど、度を越した行動も目に付く。こうした行動は、百害あって一利がない。ただ無視されるのが最も怖いことではある。国民的な関心が、危機意識を高めたのではないか。

今回のドイツ戦をみていて思い出したのは、1994年のW杯アメリカ大会である。この時は日本にとっての「ドーハの悲劇」により韓国は、かろうじて本大会出場を果たしたものの、評価は低かった。しかも本大会ではスペイン、ボリビア、ドイツと同じ組に入った。

スペイン、ボリビアと引き分けて迎えた1次リーグ最後のドイツ戦では、前半ドイツがクリンスマンのゴールなどで3点を先制した。しかし後半GKをベテランの崔仁栄から当時は大学生であった李雲在と交代すると、好セーブを連発して流れを作った。暑さの中、足が止まるドイツに対し、韓国は猛攻を仕掛け、黄善洪や洪明甫のゴールで1点差に迫った。

結局同点に追いつけず、韓国は1次リーグで敗退したが、この試合で活躍した3選手が、ベスト4に進出した、8年後の日韓共催大会の中心になる。

ドイツを破った今回の快挙は、今後の韓国サッカーにいかなる影響を及ぼすのだろうか。

今回韓国とすれば、1次リーグで敗退したとはいえ、ドイツを破ったことで溜飲を下げたのに対し、日本は後味が悪い形であったことで、日本の決勝トーナメント進出を過小評価するかもしれない。実際、両国の力の差はそれほどないだろう。けれども、無駄な反則を犯したかどうかが、1次リーグでは決定的な差になったとは間違いない。

また韓国では、アジア最終予選が終わった後、日韓大会で指揮を執ったヒディンク待望論が根強くあったし、今回の1次予選が終わった後も、ネットには「ヒディンクなら3連勝できた」という書き込みもあった。16年前の栄光にまだこだわっているようでは、進歩はない。

アジアサッカー全体のレベルが上がってこそ、日本のサッカーも高めることができる。ドイツ戦の勝利から隣国のライバルが、どのような一歩を踏み出すかが、注目される。

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