« 強引過ぎた女子卓球・南北合同チーム | トップページ

2018年5月11日 (金)

金星根、SBコーチングアドバイザーのホークスとの縁

「今季ソフトバンクに加わった金星根さん(75)も新しい挑戦を始めた。韓国球界では『野神(野球の神様)』と呼ばれる名指導者だ」

 430日付の「朝日新聞」の「天声人語」でその名を見た時、ついに「天声人語」にまで登場するようになったかと、正直驚いた。活字離れが進む今日、かつてほどの権威はないかもしれないが、「天声人語」と言えば、中学生や高校生が文章の手本として必死に書き写した、名物コラムである。

 韓国のプロ野球で歴代2位となる監督通算1372勝を挙げた金星根氏が、今年からソフトバンクのコーチングアドバイザーに就任したことに関する文章であった。

 私が初めて金星根氏に会ったのは、19年前のことだ。当時はサンバンウルという、やがて解体されることになる超貧乏球団の監督であった。エースや4番打者を金銭トレードで出して運営資金を賄う状況でも、やり繰りしながら、しっかり結果を出していた。

 20070810年の3回、SKの監督として優勝しているが、金星根氏のすごさは、弱小チームを上位に引き上げる手腕にある。

 京都出身の金星根氏は、選手起用や戦術がかなり細かい。そうした野球を韓国のメディアなどで、「チョッパリ(日本人の蔑称)野球」と非難されることもあった。

 それでもチームは強くなるから、成績が振るわないチームは、金星根氏を呼ぶ。しかし結果が出てくると、親会社である財閥の幹部が現場に介入してくるから、対立するの繰り返しで、球団を転々とした。

 私は『韓国野球の源流』(新幹社)の取材などで、何度も金星根氏に会ったことがあるが、よく「勝負をする人間は、いつも崖っぷちや」という言葉を口にしていた。

 空気を読んで権限のある人に従えば、気持ち的には楽に生きられたかもしれない。けれども、結果が出なければ解任されるのがプロの世界である。それなら、ぶつかっても信念を貫くというのが、金星根氏の生き方であった。

 少なくとも韓国で、2000年以前にプロ野球に入った人で、金星根氏の指導を全く受けていないという人は、そう多くない。ドジャースなどで活躍した朴賛浩氏も、オフには金星根氏の指導を仰いでいた。

 そんな金星根氏の野球理論の原点は、テスト生として参加した1961年の南海のキャンプにある。

 金星根氏が在学していた頃の京都の桂高校は、甲子園は遠く、在日韓国人ゆえに当時は大企業への就職は絶望的であり、中小企業で細々と野球をしていた。

 現役時代は投手であったが、南海のキャンプでは、投手としての腕の振り方など、野球の基礎を習い、トレーニングのやり方のなども教わった。結局南海に入団することはできなかったが、この時教わったことが、野球の知識の土台となった。

 南海キャンプに参加した1961年、金星根氏は祖国の実業団でプレーする在日韓国人の先輩に呼ばれて韓国に行く。この年の秋、解放後日本の野球チームとして初めて訪韓した新三菱重工名古屋との試合で好投し、韓国代表に選ばれる。翌年台湾で開催されたアジア野球選手権では、韓国代表のエースとして活躍した。 

 ただ当時はまだ、日韓の国交が正常化していなかった。64年の秋、在日としての立場を維持するために必要な日本への再入国許可が下りないまま、母親ら家族の反対を押し切り、韓国に向かった。

 ところがその後すぐに肩や肘を痛める。そして言葉も流暢に話せない祖国で生き抜くため、野球の指導者の道を歩んだ。

 監督やコーチとして在籍した韓国のプロ野球チームだけでも8球団。他にも千葉ロッテのコーチや、韓国のプロ野球機構に属さない独立球団(高陽ワンダラーズ)の監督も務めた。

 韓国で暮らして半世紀以上の歳月が流れ、今度はソフトバンクのコーチを指導するコーチングアドバイザーという、これまでない新しい立場で、日本のプロ野球で活動することになった。南海からソフトバンク。本拠地が大阪から福岡に変わっても、同じホークスである。

 入団はかなわなかったが、ホークスのキャンプで身につけた知識を基に韓国での野球生活を始め、祖国で生きていくために必死になって磨きをかけ、積み上げてきた野球の知識や哲学を携えて、ホークスに入る。

 金星根氏の波乱の野球人生を考えれば、75歳の年齢であっても、野球人生の新たな章が待っているのかもしれない。それでも、最終章に極めて近い段階でホークスに関わるというのも、何かの縁であろう。

 金星根氏が半世紀以上の歳月を経て培った経験が、今のホークスにどのような変化をもたらすか、注目したい。

 

« 強引過ぎた女子卓球・南北合同チーム | トップページ

スポーツ」カテゴリの記事

コメント

今年の8月18日~9月2日には、インドネシアのジャカルタで、アジア競技大会が開催されますね。大島さんは、2002年の釜山、2014年の仁川は取材しましたが、今回はどうするのでしょうか?

行きたいですけど、金銭的に余裕がありません。

アジア大会は、現地まで行かなくても、TBS系でテレビ中継されますからね。

・TBS・アジア大会
http://www.tbs.co.jp/asiangames/

YouTubeでは、現地の競技会場や選手村などが整備されている様子を観ることができますが、これだけの施設があるならば、いずれはインドネシアでの夏季オリンピックの開催も夢ではないという気がします。

・Penampakan Terkini Venue Asian Games 2018
https://www.youtube.com/watch?v=rrOPJvAvIVk

コメントを書く

(ウェブ上には掲載しません)

トラックバック

この記事のトラックバックURL:
http://app.f.cocolog-nifty.com/t/trackback/2011181/73464091

この記事へのトラックバック一覧です: 金星根、SBコーチングアドバイザーのホークスとの縁:

« 強引過ぎた女子卓球・南北合同チーム | トップページ