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2018年3月11日 (日)

緊張緩和の一方で、合同入場はお役御免か?

 39日、平昌パラリンピックが開幕した。前日は大雪で、スタジアムは客席も含め雪に覆われていたが、映像を観る限り、スタジアムもその周辺も、きれいに除雪されていた。土壇場の追い込み作業は、さすが韓国である。

 しかしこの日の話題の中心はパラリンピック開幕よりも、米国のトランプ大統領が、北朝鮮の金正恩朝鮮労働党委員長との会談に応じるという、ビッグニュースであった。

正月、金正恩委員長が平昌五輪に代表団を派遣することを表明して以来、その後の展開が、あまりに速い。平昌五輪は融和ムードのきっかけであったが、平昌パラリンピックは、融和ムードが保証される期限であった。融和ムードを継続、または前進させるには、パラリンピックが終わるまでに、新たな動きが必要であったが、開会式の日に、事態は想像を超えて動いたということになる。

それにしても、金正恩体制になってから、核やミサイルについても、平昌五輪への代表団派遣などの動きについても、南北首脳会談の合意、米朝首脳会談の道筋をつけた今回の動きにしても、相手の動きも見ながら、慎重にカードを切るよりも、手持ちのカードを一気に切って、自分のペースに持ち込もうとする動きが目立つ。

北朝鮮がそれだけ切羽詰まっているとも言えるが、腰を据えて交渉する堪え性がないようにもみえる。堪え性のなさは、トランプ大統領も似ているだけに、会談には不安もある。朝鮮半島情勢では起伏が激しいことは、よくあることではあるが、融和ムードに向かう矢印が、一気に反対方向に向かうことは避けてもらいたい。

1カ月前の平昌五輪の開会式は、南北の合同入場など、南北融和を強調したものであった。パラリンピックの開会式では、聖火リレーなどで南北融和を演出する場面もあったが、合同入場はなく、韓国も北朝鮮も、それぞれの国旗を持っての入場になった。

一時はパラリンピックでも合同入場が行われると報じたメディアもあったが、北朝鮮側と折り合わなかった。

理由とされるのが、入場の際に掲げるいわゆる「統一旗」のデザインだった。朝鮮半島の地図が描かれた「統一旗」に、北朝鮮側は竹島(韓国名・独島)を描くことを主張したが、受け入れられなかったからだという。

竹島を描くことに関しては、平昌五輪の間も北朝鮮は不満を示していたし、IPC(国際パラリンピック委員会)との話し合いの中でも、重ねて主張していたようだ。

「竹島問題」は理由の一つかもしれないが、平昌五輪の他にも、竹島抜きの「統一旗」で合同入場をしたことはあるだけに、理由の本質でないと、私は思う。

 これまで北朝鮮は、合同入場に関しては、人数をできるだけ揃えることにこだわっていたし、合同チームに関しては、南北が同格であることにこだわっていた。

 しかしながら現在、冬季スポーツで南北の力の差は歴然としている。問題になった女子アイスホッケーの南北合同チームにしても、ベースは韓国代表であり、北朝鮮はプラスαで加わったに過ぎない。これまでなら、拒否反応を示したのではないか。

 けれども、同格にこだわれば合同チームは成立しない。平昌五輪では融和ムードを醸成するため、合同チームが成立することを優先したのではないか。合同入場も似たような事情だったと思う。

 その点パラリンピックの時点では、南北首脳会談が決まり、米朝関係も改善の兆しがみえた。私の想像に過ぎないが、北朝鮮はもはやスポーツの場面で、必要以上に譲歩しなくてもよくなり、韓国選手団の中に組み込まれた形での合同入場より、初の冬季パラリンピックの参加であるだけに、北朝鮮の国旗を掲げての行進を優先させたのではないか。しかも、領土問題を理由にすれば、韓国人の理解を得やすいという側面もある。

 これも平昌五輪の時とは、違った形での政治利用のように思える。

 話は変わるが、平昌五輪で、そり競技ではアジア勢初となる男子スケルトンの尹誠彬の金メダルと、男子ボブスレー4人乗りの韓国の銀メダルは快挙であり、大会を盛り上げた。

 しかしそり競技はパラリンピックにないこともあり、平昌五輪が終わると会場であるスライディングセンターはすぐに閉鎖され、代表選手たちが使用できない状況になっている。

 平昌スライディングセンターができるまでそり競技の選手たちは、陸上でスタート練習をしたり、海外の施設を借りて練習したりしていた。韓国代表の選考競技を、長野五輪の会場である長野スパイラルで行ったこともあった。それだけに自前の施設は、韓国のそり競技界にとっては悲願であった。

 しかし、長野スパイラルが平昌五輪後は製氷を中止し、競技施設としては使用できなくなったように、そり競技場の維持・管理には金がかかる。韓国では平昌スライディングセンターの維持・管理に年間17億ウォン(約17000万円)を見込んでいるが、国も所有者の江原道も費用負担に難色を示している。

 そり競技の会場は、最初から維持・管理が困難だと思われていたが、大会が無事に終われば、すぐにお役御免とばかりに閉鎖されるとは、随分あっさりし過ぎている。

 平昌五輪やパラリンピックでは、スポーツそのものの価値よりも、スポーツの「利用価値」の方が目立ち過ぎているように思う。

 

 

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YouTubeでは、「KTV 대한뉴스(大韓ニュース)」のチャンネルがあり、20世紀後半の韓国における記録映像が数多く公開されています。
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ソウルオリンピックや大田万博などの大型イベントの映像もあります。

・ソウルオリンピック開幕(1715号)
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・大田万博開幕(1970号)
https://www.youtube.com/watch?v=lAmu4VOldOs

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