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2018年3月28日 (水)

兵役問題で早まったプロ野球の開幕

平昌五輪、パラリンピックが終わったばかりだが、324日、日本やアメリカに先立ち、韓国でプロ野球が開幕した。27日からは、ナイトゲームも始まった。

 今年は韓国も結構暖かいようだが、基本的に、日本に比べて寒い。例年桜の開花も、ソウルは東京より10日ほど遅いことが多い。したがってプロ野球の開幕も、日本と同時期か遅い。韓国にはドーム球場は一つだけ。例年だと、体がまだ十分に仕上がっていないこの時期のナイターでは、故障のリスクすらある寒さになることもある。

 それでもこの時期に開幕したのは、今年は8月にインドネシアのジャカルタなどで、アジア大会が開催されるからだ。今シーズンは、アジア大会の期間である816日から93日までは、試合が行われない。首位争い、ポストシーズン進出争いの輪郭がはっきりし、ヤマ場に向けて、盛り上がりをみせる時期に、シーズンを中断することになる。

 韓国のプロ野球が、そこまでアジア大会を重視するのは、兵役の問題がかかっているからだ。現在、スポーツ選手が兵役免除を受けるには、五輪でメダルを獲得するか、アジア大会で優勝するしかない。

 この兵役免除、厳密には、「体育要員」としての服務ということになる。既述したような国威発揚に貢献する結果を残したスポーツ選手に対しては、4週間の軍事訓練と、選手あるいは監督、コーチなど、「体育要員」の資格を得た競技に34カ月従事することで、兵役を終えたとみなすということである。

 かつては、2002年のサッカー・ワールドカップや、2006年のワールド・ベースボール・クラシック(WBC)のベスト4でも、兵役は免除されたが、兵役免除に対する社会の目は厳しく、2009年のWBCで準優勝した時は、免除にはならなかった。

 韓国の野球は、2008年の北京五輪で金メダルを獲得し、多くの選手が兵役を免除された。しかしこの大会以後、野球は五輪の競技種目から外された。2年後の東京五輪では復活するので、韓国球界でも期待は大きいが、五輪でメダルを獲得するのは、容易ではない。

 その点アジア大会では、日本は社会人野球の選抜チームで臨むので、プロ主体の韓国とは力の差がある。

 アジア大会でプロも参加できるようになった98年のバンコク大会以後、韓国は2006年のドーハ大会以外、全て優勝している。ただし、2006年のドーハ大会で韓国は、柳賢振(ドジャース),呉昇桓(ブルージェイズ)ら、錚々たるメンバーであったが、当時サムスンの呉昇桓が、日大生であった長野久義(巨人)にサヨナラ本塁打を打たれ敗れている。

 98年のバンコク大会は、当時ドジャースの中心投手であり、国民的な英雄であった朴賛浩の兵役を免除させるための大会であったと言って、過言でない。日本との決勝戦は、韓国が13-1のコールドで圧勝したが、優勝した瞬間、現役メジャーリーガーであった朴が、飛び上がって喜んでいた姿が印象的であった。

 アジア大会の野球では、韓国が優勝の最有力候補であることは間違いないが、露骨に兵役を終えていない選手を中心としたチームを組むと、世論の批判を受けることになる。したがって、兵役を終えていない若手選手は今シーズン、韓国代表に選ばれることに、納得してもらえるだけの力を示す必要がある。

 兵役には、かつてはいろいろな抜け穴があった。90年代半ばまでは防衛兵制度という、服務期間は、移動はできないものの、ホームゲームには出場できる制度があった。

 またスポーツ選手は負傷することが多いので、様々な理由をつけて、兵役を逃れることもあった。そうした口利きの意味もあって、韓国のプロ野球機構であるKBOの初期の総裁には、軍関係の人が多かった。

 政治家や財閥企業の息子に兵役逃れの人が多いなど、兵役問題は、社会の不公平の象徴のような存在となっており、かつてのように、融通を利かすことは難しくなった。それだけに、スポーツ選手としては、アジア大会が非常に大きな意味を持っている。

 ところで今回のアジア大会に出場できるかどうかが注目されているのが、サッカー・プレミアリーグ、トットナムで活躍している孫興民だ。韓国代表の中心選手として、ロシア・ワールドカップでの活躍が期待されている孫であるが、まだ兵役免除の資格を得ていない。

 あり得ない話だが、ワールドカップで仮に韓国が優勝したとしても、孫は兵役を免除されない(世論の動向で変わることもあるが)。兵役を免除されるには、アジア大会にオーバーエイジ枠で出場し、優勝するしかない。

 しかし、アジア大会が開催される時期は、シーズン開幕の重要な時期でもある。しかもワールドカップと違い、所属チームは、選手を代表チームに送り出す義務はない。

 韓国内の選手はプロ野球のように、多少無理をしても日程を調整し、アジア大会に合わせることができるが、海外の選手はそうはいかない。かつては、高校を卒業後メジャー目指してアメリカに行ったものの、兵役問題のために、韓国に戻れなくなったケースもある。

 一足早いプロ野球の開幕は、兵役という、韓国の若いスポーツ選手の厳しい現実を反映したものでもある。

 

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