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2017年6月30日 (金)

スポーツは置いてきぼりの平昌五輪

 今週も平昌五輪と北朝鮮の問題について書きたい。

 2010年の冬季五輪の韓国内候補地を巡っては、1997年に冬季ユニバーシアードを開催した全羅北道・茂朱と、1999年に冬季アジア大会を開催した江原道・平昌の争いになった。結局平昌が国内候補地になり、2度の落選を経て、2018年の大会の招致に成功した。平昌が茂朱を破った背景には、平昌は北朝鮮に近く、北朝鮮との交流の期待があった。国内候補地争いに敗れた茂朱は、国技・テコンドーの殿堂であるテコンドー園の建設候補地に選ばれ、テコンドー園は3年前に完成した。

 624日にテコンドー園でテコンドーの世界選手権が開幕した。しかし、話題の中心はテコンドーではなく、平昌五輪であり、北朝鮮であった。別の見方をすれば、平昌五輪の北朝鮮絡みの話があるゆえに、テコンドーの世界選手権が注目されたとも言える。

 開幕式で文在寅大統領は、「1991年に初めて南北単一チームを構成し、最高の成績を収めた世界卓球選手権と世界ユースサッカーの栄光をもう一度見たい」「南北選手団が同時に入場し世界の人たちから拍手喝采を受けた2000年シドニー五輪の感動をもう一度感じてみたい」「平昌五輪に北韓応援団も参加し、南北和解の転機になればいい」などと発言した。

 これに対して、開幕式に出席していた北朝鮮の張雄IOC委員は、東亜日報系のCATV局であるチャンネルAのインタビューで、「政治的環境を解決しなければなりません。政治はいつもスポーツの上にあります」と答えている。話の良し悪しはともかく、北朝鮮の立場ならそうであろうという発言だ。

 さらに張雄委員は、韓国側から提起されている共同開催や、女子アイスホッケーの南北単一チームについて、「私はオリンピックの専門家ですが、既にもう遅いです。共同開催というのは言うのは簡単だけど、実務的問題が簡単ではありません。アイスホッケーなどを単一チームにする問題もそうです。千葉の卓球世界選手権の時、会談は22回でした。5、6カ月かかりました」と語っている。

 これは実務者の立場からすれば、当然の意見である。韓国側の実務者に聞いても、同じことを言うであろう。つまり、文在寅大統領の発言にしても、先週書いたスポーツの所轄官庁である文化体育観光部の都鍾煥長官の話にしても、スポーツ界の意見を聞いているとは思えない。政府が現場を顧みず、自らの希望を語っているという感じだ。

 また所轄官庁は、文化体育観光部という名前こそ残ったものの、スポーツ系より文科系の意向が強いようだ。都長官も詩人である。1993年に体育青少年部(旧体育部)と文化部が合体して文化体育部になって以降、この省庁ではスポーツ系と文科系の綱引きがしばしばあった。

 思想は個人個人で違うし、必ずしも当てはまらないケースもあるが、スポーツ系は右派政権、文科系は左派政権に近い傾向がある。韓国のエリートスポーツの制度を作ったのは、朴正熙政権と全斗煥政権である。左派の金大中が政権に就くと、スポーツ関連の支援は削られ、文化に力を入れるようになった。そのことが、韓流を起こす契機になったという側面もある。

 それでなくても、崔順実ゲートに巻き込まれたことで、スポーツ界の発言力が弱まっているところに、左派政権の誕生で、スポーツ界は置いてきぼりのまま、平昌五輪の準備が進んでいく感じだ。もっとも、それ以前もスポーツ界からの発言は、あまり聞こえてこなかったが……。

 スポーツ大会としての具体的なイメージがないまま、政治家の理想論だけが聞こえてくる。応援団にしても、冬季五輪では活動の場は多くない。

 北朝鮮の応援団といえば、演奏に合わせて、歌い踊り、「我々は一つだ」など、スローガンを叫ぶといったスタイルだ。けれども、現在出場権を得るのが有力視されているフィギュアスケートのペアの競技で、そうした応援ができるのは、製氷時間くらいだ。

 2003年の大邱ユニバーシアードの飛び込み競技では、「北の応援団、静かにしてください」という場内アナウンスがあり、北朝鮮の応援リーダーが憮然としたということがあった。冬季五輪でも、似たようなことになる。

 事実上、開閉会式のために作られるオリンピックスタジアムで、公演をすることもあるだろう。しかし、そうなると公演料を求められるはずで、北朝鮮にそうしたお金を支払うことは、今の国際情勢では、認められないだろう。

 平昌五輪を通して南北交流を図るにしても、現実をしっかり見据えないといけない時期だ。ただキム・ヨナの引退により冬季スポーツで国民的なスターがいない状況では、話題作りは今のところ、南北絡みの話くらいしかないのも、一方の現実である。

 

 

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