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2017年6月23日 (金)

既にタイムオーバーのはずの平昌五輪南北共催論

 620日、平昌五輪をはじめとするスポーツ行政の所轄官庁である文化体育観光部の都鍾煥長官が平昌五輪の組織委員会を訪問し、平昌五輪において北朝鮮の馬息嶺スキー場を活用する、女子アイスホッケーで南北単一チームを結成する、聖火を北朝鮮の開城、平壌を通過することなどを検討しているといった発言をし、波紋を広げている。

 622日付の『産経新聞』はこの動きを1面トップで報道。「韓国の文在寅政権が平昌五輪で検討する一部競技の北朝鮮開催が実現すれば、核・ミサイル開発を続ける北朝鮮の金正恩政権を外貨で潤すことになり、対北制裁を強める国際社会の足並みを乱す恐れがある」との懸念を示している。

 こうした政治的な側面は置いておくとしても、大会を約230日後に控えた現段階で、責任ある立場の人にそうした発言をされても困る、というのが、準備にあたる人の本音ではないか。

 2011年に大会の招致に成功した後、スキー・滑降競技の会場である加里王山が、朝鮮王朝時代から守られてきた自然保護林であるとして、環境団体などから強い反対にあった。北朝鮮が2013年に完成させた馬息嶺スキー場が、滑降競技の国際規格に合うように造成されれば、少なくとも、スポーツ競技の面からは好都合だったのかもしれない。

 しかし平昌五輪の競技施設はほぼ完成し、テストイベントも行われた。売れ行き不調とはいえ、チケットも発売されている。時期的にみれば、共催、または分催の話はもうタイムオーバーだろう。

 それでもこうした話が出る背景として、南北の融和政策を模索する文政権であるが、北朝鮮の核・ミサイル問題などが国際的な非難を浴びる中、思うようにいかない。その点スポーツは、現実はともかく、政治とは別という原則があるため、突破口になり得る。

 また盛り上がりを欠く平昌五輪への関心を高めるためにも、北朝鮮は重要だ。2002年、サッカーW杯のすぐ後に開催され関心が低かった釜山アジア大会が、美女軍団と呼ばれる応援団を含めて北朝鮮が参加したとたん、大いに盛り上がったという例もある。

 韓国における対北朝鮮感情は、2002年当時とはかなり異なっているが、当時と同じ左派政権としては、北朝鮮カードに期待する部分は大きいのだろう。

 24日から全羅北道の茂朱で開催されるテコンドーの世界選手権に合わせて訪韓する予定のIOCのバッハ会長や、北朝鮮の張雄IOC委員にも働きかける模様だ。彼らがどういう反応を示すか分からない。

 ただバッハ会長などは、朝鮮半島の平和という側面には好感を示すことがあっても、現実に開催することの困難さを考えれば、否定するか、二の足を踏むだろう。2002年のW杯の時も、似たようなことがあった。

 アイスホッケーの単一チームに関しては、ユニットごと選手を替えるという競技の特性上、他の球技よりは合同チームは組みやすいのかもしれない。しかし、南北合同選手団を結成するというのならともかく、女子のアイスホッケーだけ合同チームというのは、やはりおかしい。

 そうした中で、聖火の北朝鮮通過というのは簡単ではないが、不可能ではない。聖火リレーの日程、コースは既に決まっているが、韓国と北朝鮮の話し合いで変更はできると思う。1988年のソウル五輪も、聖火リレーの北朝鮮通過は、大きなテーマであった。結局は実現せず、聖火は軍事境界線の近くを通ることにとどめた。今回も、可能性はあっても、すんなりとは決まらないだろう。

 それでも、北朝鮮の選手団はよほどのことがない限り、参加するだろう。ただ現段階で出場資格を得ている競技種目がない以上は、参加人数は限られている。したがって、応援団が来ることもないに違いない。

 北朝鮮のスポーツ選手は、政治的な使命から逃れることはできない。それでもスポーツを通して、人と人が交流することは意味がある。ただ五輪などの国際的なスポーツ大会においては、前提条件がある。

 五輪に参加する選手たちは、かなり前から五輪に向けて練習や調整をする。朝鮮半島の南北交流は大切だが、大会のために準備してきた、世界各国のアスリートを混乱させたり、影響を及ぼしたりすることは、開催国として避けなければならない。

 一般市民の発言ならばともかく、責任ある立場の人は、その点は留意して発言してほしい。

 

 

 

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コメント

今年3月には、大田広域市が、2030年のアジア大会誘致を検討しているという話がありましたね。

・「中央日報」2017年3月15日「韓国大田市、2030年アジア競技大会の誘致に向け一歩」
http://japanese.joins.com/article/901/226901.html

でも、2014年に仁川でアジア大会が開催されたばかりなのに、「またやるの?」という感じがします。

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