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2017年5月 7日 (日)

韓国アイスホッケーの躍進と日本

 韓国のスポーツ界では、久々の快挙と言っていい。先月下旬、ウクライナのキエフで開催されたアイスホッケーの世界選手権のディビジョンⅠグループA(2部相当)で韓国は2位になり、16チームで構成されるトップディビジョンへの昇格が決まった。3年前、韓国の高陽市で開催されたディビジョンⅠグループAの大会では5戦全敗で、3部相当のグループBに降格したばかりであることを考えると、急成長であることは間違いない。

 実際韓国のアイスホッケーは、弱かった。日本に勝ったのも2012年が初めてであり、それまでは、日本が大きくリードしていた。

 韓国の躍進のきっかけになったのは、2003年に日本と韓国で始まり、後に中国、サハリンなども加わったアジアリーグだ。日本も韓国もチーム数減少という危機的状況の中で手を結んで始まったアジアリーグであるが、韓国にとっては、日本からアイスホッケーを学ぶ絶好の機会になった。

 そして平昌五輪の開催が決まったものの、国際アイスホッケー連盟はあまりに弱かった韓国に、現状のままでは開催国の自動出場権を与えないことを表明していた。そこで韓国は、外国人選手を相次いで特別帰化させた。特別帰化とは、元の国籍を失うことなく韓国籍を取得できる制度で、現在韓国代表には、安養ハルラでプレーしている選手など、7人が特別帰化の選手として活動している。

 韓国アイスホッケーの躍進の最大の要因は、特別帰化の7人の存在であることは確かだ。ただそれだけではチームとしていびつで、3年前の世界選手権で全敗したように、チームとして機能しない。

 チーム強化の決定打となったのは、3年前からジム・ペク(韓国名 ペク・ジョソン)が、韓国代表の監督を引き受けたことだった。ソウルで生まれ、幼少期にカナダに移民したペクは、世界最高峰のNHLでも活躍した。

 韓国代表監督に就任したペクは、徹底した体力強化とともに、選手の積極性やモチベーションを高めることに心血を注いだ。その成果が今回表れたようだ。

 今年は見ることができなかったが、昨年まではアジアリーグの試合として、自宅から近い西東京市のダイドードリンコアイスアリーナで、安養ハルラなど韓国のチームの試合が行われており、私も現場で取材してきた。少し前まで韓国のチームは、カウンター中心の、非常に単調な攻撃をすることが多かったが、次第にパックがつながり、アイスホッケーらしくなってきていた。

 また注目すべきは、レベルの高い外国人選手に引き上げられるように、韓国で生まれ育った選手たちもレベルを上げ、得点に絡むようになったことだ。

 トップディビジョン進出は、韓国のメディアで大きく取り上げられている。最初は帰化選手が多く、否定的であった世論も変わってきた。韓国は日本以上に少子化が進み、人口減少は避けられない状況になっている。そうした中韓国政府は、多文化共生として、外国人の受け入れに積極的になりつつある。

 とはいえ韓国では、単一民族の意識が日本以上に強かったため、外国人に対する差別や偏見が根強くある。それだけに外国出身者と韓国の選手が一体となってなしえた今回の快挙が、韓国社会全般に影響を及ぼすのか、アイスホッケーに限定されたことなのか、その影響の広まりが注目される。

 もっとも韓国のアイスホッケーは昇格したとはいえ、トップディビジョンで戦う来年以降の展望は明るくない。

 まず2月に平昌五輪が終わった後も、特別帰化の選手が7人という、現在の態勢を維持できるかは不透明である。恒常的な強化をするためには、韓国内の選手の強化が不可欠である。しかしここで、前回も書いた、チョン・ユラの問題が影を落としている。

 スポーツ特待生に対する管理が厳しくなる中で、大学スポーツの華である、延世大学と高麗大学の定期戦である延高戦も改革を迫られた。延高戦はこれまで、毎年秋に野球、サッカー、バスケットボール、ラグビー、アイスホッケーの対抗戦として行われていた。

 韓国ではマイナースポーツであるラグビーやアイスホッケーが生き残れたのは、延高戦の存在が大きい。実際アイスホッケーの韓国代表のうち、韓国の選手の大半がこの両校の出身である。

 しかし梨花女子大の不正入学したチョン・ユラの問題の影響で、スポーツ特待生への対応が厳しくなるとともに、延高戦も、エリート競技の対抗戦から、一般の学生も参加する延高祭に変わる計画が持ち上がっている。

 延高戦の変化は既に戦力低下が著しいラグビーだけでなく、アイスホッケーにも影響を及ぼすのではないか。

 一方日本の男子は、実質3部相当であるディビジョンⅠグループBに属している。女子が平昌五輪の出場と、トップディビジョン昇格を決めたのに対し、影が薄い。しかしながら、見方によっては、隣国の躍進は、強化の絶好機である。

 特別帰化の選手の多さに様々な意見があるにしても、隣国の強化が進み、結果が出ている今のうちこそ、取り残された感のある日本の男子アイスホッケーも、いい刺激に受けて切磋琢磨してほしいのだが、果たして……。

 

 

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