« WBC韓国代表、驚異の重量打線とその悩み | トップページ | 長期化の可能性もある韓国野球の低迷 »

2017年3月 8日 (水)

危機意識の欠如が招いた韓国野球の危機

 朴槿恵大統領のスキャンダルに続き、北朝鮮による金正男暗殺、ミサイル発射、中韓関係悪化など、韓国では落ち着くことなく、ビッグニュースが続いている。

 1998年の金融経済危機の時、女子ゴルフの朴セリの活躍が国民の励みになったように、韓国では困難に直面した時、国民に勇気と希望を与えたのがスポーツであった。

 36日から第4回WBC(ワールド・ベースボール・クラシック)の先陣を切って、ソウルの高尺スカイドームで、韓国ラウンドの試合が始まった。ドーム球場が完成したことによる、韓国悲願のWBC開催であった。

 その開幕戦、世界ランク3位の韓国は、世界ランク41位のイスラエルに延長戦の末敗れ、7日には、オランダに5-0で完敗した。重い空気が漂う韓国社会を、さらに重くする結果になっている。

 WBCの場合国籍主義ではなく、ルーツがあるなど代表の範囲を幅広く認めている。今回のイスラエルチームの場合も、メジャーリーグ経験者を含め、ほぼ全員がアメリカ育ちのメンバーであり、世界ランクはあまり意味がない。それでも、開幕戦の敗戦は衝撃的であった。四死球9を記録した韓国投手陣の乱調は問題ではあるが、ここ数年、打高投低の韓国野球の傾向をみれば、10回で2点しか失っていないのだから、上出来と言っていい。

 問題は打線である。イスラエル戦も、オランダ戦も走者を出しながら、その後がつながらず、併殺などでチャンスを簡単に潰した。

 昨年のシーズンで、打点、打率、最多安打のタイトルを獲得し、打線の中心選手と期待された崔炯宇(KIA)は不振で、オランダ戦に代打で登場したのみ。金泰均(ハンファ)、李大浩(ロッテ)らも当たりが出ないことが響いている。

 さらに状況に応じた作戦遂行能力のある2番打者の鄭根宇(ハンファ)の欠場も韓国には誤算であった。金寅植監督は、自ら仕掛けるタイプではなく、選手の判断に任せるスタイルだ。それだけに、つなぎの役割を果たせる鄭根宇の存在は大きい。

 そもそも今回のメンバーには、エース候補であった金廣鉉(SK)のほか、メジャーリーグの選手も呉昇桓(カージナルス)を除き欠場し、最初から「史上最弱」の呼び声もあった。金寅植監督も、その当たりの危機感は十分にあったと思う。しかしそれを、選手全体、ひいては韓国球界全体が共有していたかと言えば、疑問である。

 ベスト4に進出した2006年の第1回大会の頃は、危機意識に溢れていた。韓国サッカーは2002年のW杯で4強に進出し、国民を熱狂させた。それに対し野球は、2004年のアテネ五輪の出場を逃していた。

 2004年のシーズンの総観客動員数は約233万人(1試合平均(約4400人)しかなかった。危機感を抱いた韓国球界は、第1回WBCでは各球団の現役の監督が、代表の監督、コーチを務め、球界を挙げて臨み4強に進んだ。

 2009年の第2回大会では、前年の北京五輪で金メダルを獲得し、気の抜けた状態であった。海外組の欠場も相次ぎ、期待はそれほどされていなかった。しかしながら、最初の日本戦で2-14のコールド負けを喫すると、このままでは北京五輪の金メダルも台無しになると金寅植監督を中心に危機意識が生まれ、それが選手たちにも広がった。

 第1回、第2回のWBCに共通するのは、第1回の李承燁、李鍾範、第2回の奉重根、捕手の朴勍完のように、監督の気持ちを、打てば響くように、チーム全体に広げるようなリーダーが存在したことだ。今回のメンバーには、闘志を持ってプレーした選手はいたように思うが、それを共有させるような選手はいなかったように思う。

 さらに4年前の3回大会で韓国は、1次ラウンドで敗退しながらも、韓国プロ野球の観客数は、ほとんど変わらなかった。昨年は総観客数が史上初めて800万人を超えた。

 不況も、相次ぐ八百長発覚も、観客数には影響がないようにみえる。そのため、各球団も選手も、代表チームより、まず球団や各個人の成績の方に目が行っている。

 けれども、過去のWBCの好成績や、北京五輪の金メダルは、韓国が他の国以上に代表チームに力を入れていたからにほかならない。意識が他の国と同じ、もしくは低ければ、結果は自ずとみえている。

 もちろん今回のWBCも、まだ1次ラウンドでの敗退が決まったわけではない。しかし、可能性があるとすれば、台湾、イスラエルがオランダを破り、韓国が台湾に勝った場合のみ、韓国、台湾、オランダが、12敗で2位に並ぶということなので、確率は低い。

 地元開催で、1次ラウンド敗退となれば、衝撃は大きい。ただちに観客減にならなくても、影響はジワジワ出てくるだろう。

 問題点は多々あるが、まずは韓国球界全体で危機意識を共有すること。再出発はそこからである。

 

 

« WBC韓国代表、驚異の重量打線とその悩み | トップページ | 長期化の可能性もある韓国野球の低迷 »

コメント

コメントを書く

(ウェブ上には掲載しません)

トラックバック

この記事のトラックバックURL:
http://app.f.cocolog-nifty.com/t/trackback/2011181/69846424

この記事へのトラックバック一覧です: 危機意識の欠如が招いた韓国野球の危機:

« WBC韓国代表、驚異の重量打線とその悩み | トップページ | 長期化の可能性もある韓国野球の低迷 »