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2017年3月16日 (木)

長期化の可能性もある韓国野球の低迷

 朴槿恵大統領の罷免が決まり、次期大統領を決める選挙は59日に行われる。今までなら、当選から就任式まで約2か月の政権引き継ぎ期間があったが、今回は、当選とともに、新大統領が就任することになる。韓国としては、これまで経験したことがないことが続き、混乱は当分続きそうだ。

 国家の一大事の中、ほとんど注目されないが、韓国はWBC(ワールド・ベースボール・クラシック)で、2大会続けて1次ラウンドで敗退した。韓国はオランダには完敗であったが、意外に強かったイスラエルとは延長に及ぶ熱戦をし、台湾には競り勝った。もし負傷で欠場した金廣鉉(SK)や、朴炳鎬(ツインズ)といったメジャーリーグの選手が加わっていれば、流れは違ったかもしれない。それでも、世代交代が進まない韓国野球の現状をみると、低迷は長期化する可能性がある。 

 韓国は2006年の第1回WBCでベスト4、2008年の北京五輪で金メダル、2009年の第2回WBCで準優勝と、輝かしい実績を誇る。とはいえ、実力的にはまだ日本が上回っている。それでも、日本と対等、時にはそれ以上の実績を残せた理由の一つに、国際大会の経験の豊富さがある。

 近年日本も高校生レベルの国際大会にも積極的に出場するようになったが、以前は日程が夏の甲子園大会に重なることが多かったこともあり、消極的であった。それに対して韓国は、U18野球W杯の前身である、AAA世界野球選手権が1981年に始まった時からトップ選手を選抜したチームを送り、1981年、94年、2000年、2006年、2008年の5回優勝している。これは、キューバの11回、アメリカの8回に次ぐ成績である。

 1981年に優勝した時は、後に中日でも活躍した宣銅烈おり、宣は82年にソウルで開催された世界アマチュア野球選手権での韓国の初優勝に貢献した。94年のメンバーには韓国を代表するホームラン打者・李承燁(サムスン)がおり、2000年のメンバーには秋信守(レンジャース)、李大浩(ロッテ)、金泰均(ハンファ)、鄭根宇(ハンファ)らがいる。

 1982年に韓国のプロ野球が誕生した頃に生まれた2000年の優勝メンバーは、韓国野球の黄金世代である。中学生の頃、韓国人初のメジャーリーガーであるドジャーズの朴賛浩の影響を受けたとういう点では、朴賛浩キッズの第1世代で、2006年の優勝メンバーである金廣鉉は、朴賛浩キッズの最後の方の世代となる。2008年の優勝メンバーには、目立った選手はいないものの、高卒ながらすぐにプロの1軍で活躍した選手もいる。

 1981年のメンバーはともかく、李承燁以後、AAA世界野球選手権で活躍した選手が、WBCや北京五輪で活躍した。日本などは国際試合に力を入れていなかっただけに、それは大きなアドバンテージであった。

 メジャーリーグ主体で開催されるWBCは、国際大会としては、問題や違和感がある。それでも、WBCは野球の国際大会の面白さを認識させ、各国に代表チームの意識を目覚めさせた。その意味では、今まで韓国が持っていた優位はなくなっている。

 また韓国のスポーツは少数エリート主義で、高校のチーム数は6070くらいしかない。同世代の選手は幼い頃から顔見知りであり、代表チームでも一体感を作りやすい。

 その一方で少数エリート主義は多様性がなく、一度歯車が狂いだすとなかなか元に戻らない。韓国の野球は金廣鉉が出て以降、その状態になりつつあり、次の世代が出てこない。 

 金廣鉉は1988年生まれであるが、野球に限らず韓国のスポーツ全体に、ソウル五輪が開催された1988年前後に生まれた世代は、優秀な選手が多いが、それ以降は落ちる傾向にある。原因としては、1997年末に始まる金融経済危機の影響が挙げられている。加えて野球の場合、2002年のサッカーW杯のため、サッカー人気が高まり、野球人気が落ち込んでいたことも影響している。

 ただそれならば、第1回、第2回のWBCや北京五輪での優勝をみて育った、これからの世代は期待できそうだが、そうもいかない。 

 韓国ではスポーツをする子供は授業をほとんど受けないでスポーツに専念していたが、近年方針が変わった。韓国では平日でも高校野球の全国大会が開催されていたが、2011年から、平日は授業を受けて、週末だけ、近隣の高校とリーグ戦を行う、週末リーグ制が導入された。方向性は正しいと思うが、現状では勉強もスポーツの両方とも中途半端になっているようだ。

 また2007年にソウルの中心部にあり、高校野球の大会が開催されていた東大門野球場が都市開発により撤去された。1982年にプロ野球が始まって以降、韓国の高校野球人気は落ちていたが、それでも、東大門野球場があった頃は、観客もそこそこいたが、撤去以降は、高校野球人気は大きく落ち込んだ。

 それでも磨けば光る、原石のような選手はたくさんいる。けれどもその多くが、プロに入る頃には肩や肘を痛めている。酷使の問題もあるが、投球前後のケアや、上体に頼り肘の負担が多い、投球フォームにも問題がある。

 また、八百長は論外にしても、高校生レベルでも、死球狙いでわざと当たりにいくなど、野球に対する姿勢にも問題がある。

 そうした問題はあっても、12人と天才的な選手が出てくれば、低迷の懸念はなくなるだろう。しかしながら、現状は厳しいと言わざるを得ない。

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