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2016年12月 7日 (水)

韓国の大谷世代は兵役中~2012年U18日韓代表選手のその後

 2016年のプロ野球の主役は、二刀流が一段と進化した大谷翔平(日本ハム)であった。韓国でも日本の野球への関心は高く、大谷は広く知られた存在である。しかし、彼が高校(花巻東)時代、韓国で試合をしたことを知っている人は、そう多くない。

 ソウルで開催されたU18世界野球選手権のことである。もっともこの大会での日本代表の主役は、藤浪晋太郎(阪神)と森友哉(西武)の大阪桐蔭バッテリーであった。

 それでも大谷は、初戦のカナダ戦に4番・投手で出場し、登板しない時は、外野手やDHで中軸を務めるなど、二刀流の原点をみせた。この大会日韓戦は、第2ラウンドと5・6位決定戦の2回あった。第2ラウンドでは、藤浪が完投して4-2で日本が勝ち、5・6位決定戦では、先発した大谷が2点を失うなどして3-0で韓国が勝った。

 この大会、韓国は優勝したアメリカや準優勝のカナダに勝ち、日本は3位の台湾に勝っており、上位チームにはほとんど差がなかった。あれから4年。日韓の代表選手たちはどうなったか。改めて調べてみると、日本と韓国の環境の違い、韓国野球の状況が浮き彫りになった。

 

【日本】

投手

藤浪晋太郎 大阪桐蔭→阪神(投球回数169711敗、防御率3.25

岡野祐一郎 聖光学院→青山学院大

大谷翔平 花巻東→日本ハム(投球回数1401041ホールド、防御率1.86、打数323、打率.322、本塁打22、打点67

濱田達郎 愛工大名電→中日(投球回数4、1敗、防御率15.75

佐藤拓也 浦和学院→立教大⇒JR東日本

大塚尚仁 九州学院→楽天

神原友 東海大甲府→東海大

捕手

中道勝士 智弁学園→明治大⇒オリックス(育成)

田村龍弘 光星学院→千葉ロッテ(打数371、打率.256、本塁打2、打点38

☆森友哉 大阪桐蔭→西武(打数392、打率.292、本塁打10、打点46

内野手

金子凌也 日大三→法政大⇒Honda鈴鹿

田端良基 大阪桐蔭→ →日本ウェルネス大北九州

北條史也 光星学院→阪神(打数385、打率.272、本塁打5、打点33

菅原拓那 常総学院→国学院大学

城間竜平 光星学院→東北福祉大⇒パナソニック

伊與田一起 明徳義塾→専修大学⇒JR西日本

外野手

笹川晃平 浦和学院→東洋大⇒東京ガス

高橋大樹 龍谷大平安→広島

呉屋良拓 浦添商→日本大

水本弦 大阪桐蔭→亜細亜大⇒東邦ガス

【韓国】

投手

☆沈載珉 開成高→kt(投球回数54-1/323敗、防御率5.47)

金鍾守 蔚山工高→ハンファ

尹炯培 天安北一高→NC→兵役(公益)

宋周永 天安北一高→斗山→兵役

☆李建郁 東山高→SK(投球回数2/3、防御率27.0

張現植 ソウル高→NC→警察(兵役)→NC(投球回数78-1/3131ホールド、防御率4.48

☆李受珉 商苑高→サムスン→尚武(兵役)

☆安圭賢 徳寿高→サムスン→警察(兵役)

捕手

韓承澤 徳寿高→ハンファ→警察(兵役)→KIA(打数28、打率.179、打点5)

☆安重烈 釜山高→kt→韓国ロッテ(打数28、打率.179、打点3)

内野手

尹大瑛 真興高→NCLG→警察(兵役)

姜勝淏 天安北一高→LG2014年警察(兵役)→LG(打数38、打率.184、打点3)

桂廷雄 信一高→建国大

鄭永俊 徳寿高→NC→警察(兵役)

外野手

崔允赫 中央高→延世大

宋浚碩 奬忠高→サムスン→現役入隊

金仁泰 天安北一高→斗山→警察(兵役)→斗山(打数18、打率.167、打点3)

李遇成 大田高→斗山→尚武(兵役)→斗山(打数5、打率.200

沈載倫 天安北一高→LGNC→兵役(公益)→NC

▽ポジションは大会登録時のもの。( )は今シーズンの1軍公式戦の成績。☆は当時2年生。⇒は今後の進路予定

 

 大谷や、今年やや不振であった藤浪の活躍はもちろん、今年は田村が捕手でベストナインに輝き、北條が内野手でスタメン出場するようになった。森はもっとやれるという思いはあるが、打撃センスの良さはみせている。

 しかし濱田は2年前に5勝を挙げたが、その後は肘を痛め、このオフ、戦力外を告げられ、育成契約を結ぶことになった。

 大学に進んだ選手は、佐藤、中道、金子がプロ志望届を提出したが、中道がオリックスに育成枠で指名されただけだった。社会人で改めてプロを目指すことになる。

 田端のように、亜細亜大に合格したものの辞退し、しばらく野球から離れていたが、この春から日本ウェルネス大北九州で野球を再び始めた者もいる。

 日本の場合、プロに行くのはごく一握りの選手だが、それでも独立リーグはあるし、チーム数が少なくなったとはいえ、社会人野球もあるなど、選択肢は多い。

 韓国の場合、社会人野球は15年ほど前になくなり、プロで戦力外になったり、入団できなかったりした選手の受け皿としては、韓国のプロ野球機構(KBO)に所属しない漣川ミラクルというチームが独立球団としてあるだけである。

 韓国の選手は、桂廷雄と崔允赫が大学に進学した他は、すぐにプロ入りしている。桂も斗山に10位指名されており、高校で指名されなかったのは、当時の代表では崔だけである。

 もっとも、当時の3年生で9球団、2年生は翌年から1球団増えて10球団になり、1球団当たり10人が指名される。それに対して高校のチーム数は最近70校に増えたが、当時は60校余り。代表クラスの選手であれば、大半が指名されて当然ともいえる。

 膨大な資源の中から宝石を探さなければならない日本と違い、限られた人材の中から選ぶ韓国では、スカウト活動がそれほど活発でない。近年大学の試合は地方で開催されることが多く、スカウトの目が行き届かないこともあり、大学に進んだ2人は、今年のドラフトで指名されることはなかった。しかも、崔順実の娘、チョン・ユラの不正入学の影響で、スポーツ特待生の入学や、入学後の成績管理が厳しくなり、大学スポーツは大変な時代になっている。

 プロ入りした選手では、兵役中もしくは兵役を終えたばかりの選手が多い。一口に兵役と言っても、軍隊のチームである国軍体育部隊の尚武や警察のチームに所属する、自治体や公共企業体の現場で働く公益勤務、軍の部隊に配属される現役入隊という3つのケースがある。

 U18の大会の5・6位戦で、大谷から先制二塁打を放った宋浚碩は肩を故障し、昨年から、軍部隊に配属されている。

肩や肘の故障は、日本でも問題になっているが、韓国ではより深刻だ。この時の代表の投手はほとんどが、肩や肘、とりわけ肘に故障を抱えていた。手術をして1年は本格的な投球ができないのなら、この際、兵役を解決しようというケースもある。当時韓国高校球界ナンバー1と言われた尹炯培もこのケースで、昨年から自治体の公益勤務要員になっている。

兵役期間中も野球を続けられる尚武や警察のチームの入団は、競争が激しい。ただ入れたとしても、2つのケースがある。

1軍で活躍していた選手は、元のチームが復帰を待ちわびている。仮に兵役期間中に他の選手が台頭したとしても、貴重なトレード要員となる。

一方、入団数年で兵役に入ったU18の代表のような選手たちは、尚武や警察であろうと、公益勤務であろうと、軍部隊に配属されようと、除隊後の実力をみて、今後の野球人生が決まる。

近年は、尚武や警察を経てブレイクするケースが目立っている。今年の新人王である申在永(ネクセン)は警察の、昨年の新人王である具滋昱(サムスン)は尚武を経験している。

その一方で、入団した年に新人王になったのは、2007年の林泰勲(当時斗山)以後いない。この年はシーズン終盤になって、北京五輪で日本キラーとなる高卒ルーキーの金廣鉉(SK)も台頭している。その前の年は、現ドジャーズの栁賢振(当時ハンファ)が、高卒ルーキーながら、新人王とMVPを独占した。高卒ルーキーが活躍したのは、この頃までで、その後は若手が伸び悩んでいる。

今回、早々に兵役を終えた選手は、元のチームでないケースもあるものの、とりあえずプロ野球に戻ることができた。けれども、これから数年が正念場になる。

当時の韓国代表では、まだ1軍で本格的に活躍している選手はいない。それでも、来年のWBC(ワールド・ベースボール・クラシック)は無理としても、今後のWBCや五輪などの舞台で、日韓の大谷世代が再び相まみえる日は来るのだろうか。韓国の選手にとっては、ここ数年が勝負どころになる。

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小倉全由(日大三)監督を囲む、

2012年、U18日本代表の選手たち


 

 

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