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2016年11月29日 (火)

政治スキャンダルに巻き込まれた韓国スポーツの悲劇

 朴槿恵大統領が条件付きながら、任期前での退陣を表明した。これで韓国情勢が落ち着くとは思えない。それでも、少なくとも政治家は、朴大統領の退陣がゴールではなく、混乱をいかに最小限に抑えて、次の政権につなぐかに力を注ぐべき時期になったはずである。

 それにしても、朴槿恵―崔順実を中心とした一連のスキャンダルは、留まることなく、広がっている。事件の震源地の一つが、スポーツの所轄官庁である文化体育観光部であるだけに、スポーツ界も巻き込まれている。

 2000年以降、韓国スポーツの星であり、希望であったのは、水泳の朴泰桓とフィギュアスケートのキム・ヨナである。この2人にも、火の粉が降りかかってきた。

 崔順実、チャン・シホとともに、スポーツ利権に大きく関わっていた人物に、「スポーツ大統領」とも呼ばれ、スポーツ界に絶大な影響を及ぼしていた金鍾という人物がいる。

 もともとスポーツビジネスの権威で、大学の学部長であった2013年、文化体育観光部の次官に就任すると、スポーツ界の不正の根絶を訴え、ドーピング違反者は、国際競技団体の処分期間が終わった後も3年間は国家代表に選ばないという規則を新たに作った。

 その規定に、水泳の英雄・朴泰桓が抵触する。2014年にドーピング違反が発覚したものの、リオ五輪を前に、国際水泳連盟の処分期間は過ぎ、記録の面でも、五輪出場要件を満たしていた。ただ国内の規則があるために、出場できない状況になっていた。これに対し、二重処罰ではないかという批判があり、朴泰桓も出場を求め、国内の裁判所やスポーツ仲裁裁判所の裁定を求めており、韓国内でも、朴泰桓の出場を求める世論が強かった。

 そうした中金鍾は、五輪に出場した場合、様々な不利益を受けることになるなどと、五輪出場を諦めるよう、朴泰桓を脅迫していた事実が、明らかになった。仮にも教育者であった人間が、立場を利用して選手を脅迫するなど、あってはならないことである。

 また201411月に、崔順実の側近であるチャ・ウンテクが企画し、国民体操として広めようとしたヌルプン体操の披露会に、キム・ヨナが出席しなかったことで、キム・ヨナが様々な不利益を受けたという話も広がった。この披露会、朴大統領自ら参加するなど盛大に行われたが、キム・ヨナの不利益という話は、疑わしい部分が多い。

 一方、新体操の孫延在やロンドン五輪・跳馬の金メダリストである梁鶴善は、披露会に参加している。孫延在はキム・ヨナに続く韓国スポーツ界のヒロインとして、国民的な人気があっただけに、いわくつきの体操の行事に参加したことによるダメージは大きい。

 とはいえ、大統領が出席する行事に、文化体育観光部や大韓体育会、韓国の体操協会などから参加を指示されれば、現役の選手が断れるわけがないので、気の毒な感じがする。

 それに対して、決定的なダメージを受けたのは、スピードスケートの李奎爀である。崔順実の姪であるチャン・シホが設立した冬季スポーツ英才センターの設立に、李奎爀も関わっていた。李奎爀は五輪のメダルこそないものの、1994年のリレハンメル大会から2014年のソチ大会まで、冬季五輪に6回出場し、世界スプリントなどでも優勝した世界的なスケート選手である。

 冬季スポーツ英才センターに関しては、政府の特別扱いや、財閥などからの支援金の横領疑惑などが問題になっている。李奎爀とチャン・シホは以前から面識があったようで、李奎爀がこの組織の不正に、どこまで関係していたかは分からない。

 ただ一般論として言えば、冬季スポーツの英才を育てる所轄官庁肝いりの組織で、引退した選手の活動の場にもなると誘われれば、断る理由はないだろう。

 ことの真相は分からない。ただ言えることは、20年以上世界のトップの舞台で活動し、経験を積んできた貴重な人材であっても、この事件に対する韓国人の感情を考えれば、致命的な傷を負ったことは確かだ。

 韓国のスポーツは、その発展過程から、国と密接な関係にあった。となれば、政治権力がおかしくなれば、スポーツも影響を受ける。

 これは韓国に限ったことではない。トランプがアメリカの大統領に当選したように、今後どのような人物が政治のトップになるか分からない。そうした政治の影響を受けないためには、スポーツ界の自立が必要だが、これは容易でない。それでも、その意識は持っているべきだろう。

 また、スポーツの不正腐敗の追放を訴えていた「スポーツ大統領」自らが、崔順実一派の不正に大きく加担していたというのは、笑えない喜劇であるが、スポーツ界の側にも彼らの介入を招く、腐敗体質があったことも確かである。当局から介入を受けないためにも、いかに自らを律することができるか。自立と自律。今回の一連のスキャンダルがスポーツ界にもたらした教訓である。 

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