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2016年10月27日 (木)

日本ラグビーのレガシーを壊してもいいのか?

 いまは値札表示をするようになってきたが、かつてはソウルの南大門市場などでは、店の人の言い値で、日本人などをみると、「お客さん、これ1万エン」と日本語で吹っ掛け、「高い」と言って店を出ようとすると、「7000エン」「5000エン」と平気で、半分くらいまで値段が下がることがよくあった。これと同じとは言わないが、東京五輪の競技施設の建設コストの上がり下がりは、市場の値段交渉を彷彿させる。

 ボート・カヌーの会場など、五輪施設の問題がメディアを賑わせていた先週、秩父宮ラグビー場が2019年のラグビーワールドカップが開催された後解体されると、ラグビー場を運営する日本スポーツ振興センターから日本ラグビー協会に連絡があったという小さな記事が載った。

 五輪期間中、ラグビー場を解体して駐車場などにし、五輪後はラグビー場の地に神宮球場を移転し、新球場完成後、野球場の地にラグビー場を移転するということは、このコラムでも、何度か書いた。しかし、旧国立競技場解体後に起きた、建設コストを巡るトラブルやデザイン変更、そして五輪会場を巡る一連のゴタゴタをみると、安易に今ある施設を壊すべきではないと、改めて感じる。

 何より気になるのは、2020年の東京五輪では、レガシー(遺産)を残すということが、大きなキーワードになっているが、その一方で、今あるスポーツのレガシーに対する敬意が感じられないということだ。

 くしくも秩父宮ラグビー場の解体の時期の連絡があった日の翌日、日本ラグビーのスーパースター、平尾誠二氏が亡くなった。私は観た平尾氏の試合では、平尾氏が大学4年生と時の新日鉄釜石との日本選手権、神戸製鋼の時の社会人選手権決勝で、ロスタイムに入ってからのウィリアムスの逆転優勝につながる同点トライのあった試合、それから、日本代表がスコットランドを破った試合などが、印象に残っている。そのうち、日本選手権の会場であった国立競技場は今はなく、社会人ラグビーやスコットランド戦の会場であった秩父宮ラグビー場も解体されようとしている。

 秩父宮ラグビー場にしても、神宮球場にしても、古いがゆえに問題が多いことも事実である。けれども、国内の試合を行う分にさほど支障がない。それどころか、ラガーマンや学生野球の選手にとっては、それぞれ聖地である。そして、日本スポーツのレガシーと言って過言でない。

 確かに東京五輪の時は、駐車場や資材置き場のようなものは必要だろう。都会の中にあるだけに、使える場所は限られている。それでも以前にも書いたように、開閉会式の時は、周辺の道路を大会関係車両以外は通行止めにして、一部を駐車場にすることもできる。秩父宮ラグビー場を使うにしても、解体を一部分に限定することは可能なはずだ。ラグビー場は、東西のメインスタンド、バックスタンド、南北のゴールポスト裏のスタンドと、完全に分かれて建設されている。

 これまでの経緯をみていると、どうもまず解体ありきの感じがする。何とか日本スポーツのレガシーを残そうとする、気持ちが感じられない。今あるレガシーを尊重せず、4年後の東京五輪でレガシーを、と言って、どこまで説得力があるのだろうか。

 まだ実際に解体されるまで、3年の時間がある。新国立競技場や豊洲新市場の問題から、教訓とするところは多いはずだ。

 23日の日曜日、私は神宮第2球場で、来年のセンバツの出場をかけた、高校野球の秋季都大会を取材していた。第2試合の途中、球場の外から、法政大学の校歌が聞こえてきた。神宮球場では、明治大学が東京6大学の秋季リーグの優勝に王手をかけ、立教大学と試合をしていた。第1試合で秋季リーグの全日程を終えた法政大学が、球場の外で、4年生の応援団員の引退式を行っているようだった。その隣の秩父宮ラグビー場では関東大学ラグビーの慶応・帝京の試合などが行われていた。神宮外苑界隈には、若者の歓声がよく似合う。

 その一方で、日本青年館も解体され、日本青年館と明治公園の土地と、旧国立競技場の土地が、一体となって整地され、もうすぐ新国立競技場の建設工事が本格的に始まる。2020年までは、工事などで不便が生じることは仕方ないと思う。しかし、その後も、工事が続くのは、如何なものかと思うのだが。

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新国立競技場の建設現場。手前に日本青年館があった

◇  ◇  ◇  ◇    ◇  ◇  ◇  ◇

 かねてより噂になっていた影の権力者の存在が明るみになって、韓国政界は、大混乱である。この影の権力者、スポーツ財団の設立や、娘のスポーツ特待生としての名門・梨花女子大学の入学にも疑惑が持たれており、この問題、スポーツ界にも飛び火しそうだ。

 しかも、最近行われた大韓体育会の会長選挙では、政府の方針に否定的な人物が当選した。2年後の平昌五輪は、東京五輪とはある意味似ているが、違った状況で混乱が深刻化しそうだ。その点については、改めて書きたいと思う。

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